第42回日本ハンドボールリーグのタイトル争いで注目したのが男子のシュート率争い。試合数が大幅に増えたことで不利になったと見られたサイドプレーヤー陣の中にあってトヨタ車体の藤本純季がキラリと存在感を発揮した。7年目にして「念願だった」シュート率のタイトルを手中にした職人サイドマンをHANDBALL@STATIONブログでクローズアップした。

悪条件をはねのけて!

第42回日本リーグは11日にレギュラーシーズンが終了し、全部門の個人タイトルも決定した。とりわけ注目していたのが男子のシュート率(フィールドシュートの得点率)の争いだった。

最終週を前にしてトヨタ車体の藤本純季が首位に立ち、同じく車体のルーキー吉野ら2位以下に1割以上の大差をつけ、リーグ7年目にしての個人賞レースを制しての初タイトル(そのほか今回を含めてベストセブン賞3回)を目前にしていた。

ところがこのシュート率賞の対象となるのはフィールド得点ランキングで10位以内に入る選手だけ。前週までぎりぎり10位だった藤本のあとに東長濱(大崎電気)と濱口(トヨタ自動車東日本)が僅差で迫っており、最終戦の結果いかんで、せっかくのシュート率1位がフイになってしまう状況だった。

そして、迎えた最終週。藤本が大同特殊鋼戦で3得点をミスなく決めたのに対し、東長濱、濱口とも得点が伸びず、10位をキープした藤本の初受賞が決まった。

フィールド得点10位内をキープ

なぜ今回このシュート率争いに注目したかと言えば、今季から3回戦制となって試合数が大幅に増えたことにより、フィールド得点争いの上位は各チームのポイントゲッターが多くを占め、これまでシュート率の主役になっていたポストやサイドプレーヤーは影が薄なっていたのだ。

そのため例年なら7割超えのハイアベレージで争われる部門が、今回はバックプレーヤー中心のレースになったことから軒並み5割台か、それを下回る数字が並んだ。

価値あるサイドプレーヤーの勲章

そんな中、サイドプレーヤーながらG96/S131で0.733と、男女を通じて唯一7割台をマークした藤本の記録は燦然と光った。

また同じポジションに抜群のポテンシャルを誇るルーキーの杉岡がグンと頭角を表しため、年明けの後半戦からスタートメンバーの座を明け渡して出場時間が減っていたことで、なおさらその価値も高いものになった。

勝利を最優先するのは当然であり将来を見込んで力のある若手を起用するチーム方針も受け止めていた。それまでフィールド得点ランキングが12位前後だったことから「リリーフ役に回った時点でタイトルは半分諦めた」と割り切ったという。

しかし、そんな藤本にチャンスが訪れた。2月24日の豊田合成戦だった。

この試合、体調を崩してメンバーから外れた杉岡に代わってスタートから出場した藤本が9得点をマークして一気にランクアップしたのだ。

タイトルは頭になかった。レギュラーシーズンの2位を争っていたライバル合成との重要な一戦。「とにかくチームの勝利を思って全力で走り、力いっぱい戦った」ことが大量得点につながった。

1本1本を大切に!

タイトルの可能性が生まれたあとの3試合を、「少ない出場時間の中で1本1本のシュートを大切に打っていこう」と念じながらプレーした。

その結果、1試合の平均4得点、シュート率とも自身の日本リーグキャリアで最高の数字を残せたことが大きな喜びとなった。

「サイドプレーヤーとしてシュート率に関してのこだわりはありました。いつかは獲得できたらいいなと思っていた賞だったので本当にうれしく思います」と藤本は満足げな表情を浮かべた。

そして、大崎と勝点で並び、総得失点差で2位のリーグ結果についても「シーズン中はケガ人がたくさん出ながらも、コートで戦える選手が1人ひとり責任を持ち、それ乗り越えて戦い抜いてこれたのはチームとして大きな収穫だと思います。

個人的にはチームの勝利のためにできることを自分なりに考え、ベテランとして1つひとつのプレーをしっかりやってきたつもりです」と総括した。

最終戦は8-8とイーブンだった前半21分からの3得点が効果的だった。

とくに玉城からのパスを受けてのゴールシーンを振り返り、「どうしても流れを変えたかったので、狙い通りにしっかり決められてうれしかったです」と笑顔を返した。

悲願のプレーオフ制覇に全力投球

シーズンを締めくくるプレーオフが2週間後に迫っている。

今回からステップラダー方式となり、2位の車体は合成vs大同の勝者を2日目に迎え撃ち、それに勝利したあと3日目の決勝戦で大崎に挑むことになる。

そこでこんな質問を藤本にしてみたーー「残念ながら1位は大崎でした。決勝で控える大崎は、やはり特別な思いがありますか? また、GKの木村選手がケガから復帰するとなると雪辱の思いもありますか?」と。

「大崎電気には散々負けてますから、やはり大崎電気に勝利して優勝を、という気持ちになりますよね。もちろん木村選手も素晴らしいキーパーですからね。でも、キーパーが誰であろうが、自分は自分の準備をしてチームのために1つでも多くのゴールを確実に決めることを意識してがんばりたいと思います」

目標としていたタイトルを手に入れた藤本はファイナルステージでも1本1本のシュートを大切にしながら全勢力を注ぎ込む決意だ。悲願の日本リーグ初優勝を狙う車体にとって職人サイドプレーヤーがいつでもスタンバイOKなのは、なによりも心強いに違いない。

※写真は専カメ(杉浦勝彦)さん、森智種さん提供