復活導いた愛あるサポート!

 おりひめJAPANの池原綾香選手が所属するNFHニューコビンは4月28日のデンマークエリートリーグのプレーオフ・グループリーグ最終戦でコペンハーゲンと対戦。
ここまで3勝2敗でグループ2位のNFHはこの試合に勝てば準決勝に進出できるが、負けると3位のエスビャウと順位が入れ替わるとあって「なにがなんでも!」と闘志をみなぎらせてコートに上がった。

アヤカコールを背に登場

前節のラナース戦からベンチ入りしていた池原選手も気合い充分だった。3月13日に左ヒザ靭帯損傷で全治3ヶ月の診断を受けたが、4月初めに日本から駆けつけた小波津祐一さん(小波津接骨院総院長)の治療により驚異的に回復してチーム練習に合流できるまでになり、ヤコブ監督のGOサインがあればいつでもコートに飛び出す構えだった。

そして試合開始。前半はNFHの流れで11分9ー5と先行を続けていたが、15ー15と同点に並ばれて迎えた後半は小さなミスが重なって相手にペースを奪われた。
「うちのチームはやはり後半が課題です」と口にしていた池原選手の不安が悪い方に的中してしまい、38分17ー19、42分18ー21と劣勢が続いた。

そんな中、44分過ぎに池原選手がコートに登場! ニューコビンから駆けつけたサポーター、ファンから「アヤカコール」が送られた。
すると出場直後に池原選手が鮮やかなゴールを決めて20-22。スタンドサポーターのボルテージもグンと上がった。

リーグ2連覇、来季のCLの夢消える

しかし、コペンハーゲンに傾いた流れを引き戻すまでに至らず、57分にも自身2点目となるシュートが決まったが、26-31と5点差をつけられての敗戦となった。この瞬間にベスト4進出を逃してリーグ2連覇、そして来季のEHFチャンピオンズリーグ(CL)出場の可能性も消滅したNFHだった。

試合後の選手たちはガックリ。中でも両手で顔を覆って涙ながらにロッカールームへと移動した池原選手の背中には痛々しいばかりの悔しさと落胆ぶりが見て取れた。

こみ上げる悔しさと感謝の念 

   「私としてはこのシーズン、結果を出したかっただけにこの負けは本当に本当に悔しい想いでいっぱいです」と池原選手。しばらくはなにも考えることはできず、結果を受け止めるまでに長い時間が過ぎた。

それでも「今季絶望」とされたヒザのケガに見舞われながら、決戦の舞台でカムバックできたことに感謝の念が湧き上がってきた。

「ヒザの状態はまだ少し靭帯のルーズさが残っていて、100%のコンディションではありませんが、小波津さんの治療のおかげで痛みはなく、状態的にはとても良くなっています。
ただ、やはりまだすべてが戻ったわけではなく、自分が思っていることと身体が一致していないので、もどかしいことはたくあります。
ですが、このファイナル4進出するために、小波津さんをはじめたくさんの方が私のために動いてくださって、この試合にこうしてコートに戻ることができ、得点に絡めることもできました。
私がコートに入った時、ファンやサポーターの方々がアヤカコール、盛大な拍手を送ってくださったことは忘れられません。それは本当に嬉しかったです」

「こだわりたかった今シーズン」

ちょうど1年前、デンマークに短期滞在して現地チームの練習に加わり、そのプレーがNFH・ヤコブ監督の目に留まって移籍のオファーを受けた。
そしてチームはリーグ初優勝に輝き、世界最高峰のチャンピオンリーグの出場権獲得という、まるで夢のようなステージが用意されたのだ。

それから157㎝の小さな池原選手が無我夢中のチャレンジ。加入当初の練習では打つシュートがことごとくGKにシャットアウトされ、180㎝を超える選手がザラにいる本場ヨーロッパのパワーあふれるプレーに何度も弾き飛ばされた。

それでもコツコツと努力を重ね、見違えるほどフィジカルも向上して急速にチームに馴染んでいった。なによりも個人の希望を優先するクラブ、いつも温かく手を差し伸べてれるチームメイトやサポーターの後押しが追い風になった。

そうして右サイドのレギュラーの座を勝ち取るとデンマークリーグ7試合でベスト7に輝き、クラブとは2シーズンの契約延長を交わし、そしてチャンピオンリーグでもオールスターチームにノミネートされるまで光り輝いた。
すべては「今シーズンの結果にこだわりたい」と遮二無二に突っ走ってきた過程でつかんだものだった。

それだけにシーズン終盤になって故障離脱するのが残念極まりなかったし、どうしても諦めることができなかった。
そして、「可能性がある限り、治療をして今シーズン間に合えばプレーをしたい」と池原選手から相談を受けた小波津さんの気持ちが動き、超過密スケジュールを調整してデンマークに駆けつけたのだった

ゴッドハンドを動かした「強い想い」

4年前、日本代表に初招集される1週間前に足首のじん帯断裂のケガを負いながら、金城義博さん(浦添市で飲食店「とりひろ」を経営)から紹介された小波津さんの治療で合宿参加が可能となり、それをきっかけに日本を代表するライトウイングへと駆け上がっていった。以来、個人サポートをしてくれる小波津さんは心強い存在であり続けた。

4月4日にデンマークに着いたその夜に初回治療が施され、翌日にはランニングどころか普通にジャンプができるまでに回復。固定器具でなんとか歩行可能だった池原選手の大変身にNFHのスタッフたちは目を丸くするばかりだった。
治療先進国のデンマークにありながら「監督、コーチなどチームスタッフの皆さんが選手ファーストで、選手のためになるならばと理解を示していただき、最大限の感謝とリスペクトしてくれたことは大きな喜びでした。行ってよかったです」と小波津さんも喜びの言葉を返した。

”じぃじぃ会”の申し出に感涙

国内外からたくさんのお見舞や激励も嬉しかったし、とくに郷里の沖縄からの申し出には感激するしかなかった。
今回の小波津さんの費用はすべて池原選手が負担する段取りだったが、前述の金城さんや父親をはじめ小学生時代からずっと彼女を応援する"じぃじぃ会"からの支援金が送られたのだ。

「どうしてもと自分が小波津さんにお願いしたこと。とんでもない!」と頑ななまでに断り続けた池原選手と「俺たちの気持ちなんだよ!」という"じぃじぃ会”メンバーによる「受け取れ」「受け取らない」の熱いバトルがしばし続いたという。
それでも集合場所となった「とりひろ」とデンマークとでLINE電話が繋がり、1人ひとりから「綾香は俺たちの希望の星なんだぞ!」「がんばっている綾香を応援するのが嬉しいんだよ!」などと変わるがわる言葉をかけられ、ようやく「わかりました。このご恩は必ずプレーで返します!」と号泣しながら返事した池原選手だった。

沖縄でよくある模合(もあい)というのは、グループで一定額の金銭を払い込み、定期的に1人ずつ順番に金銭の給付を受け取るのが一般的だが、この"じぃじぃ会"は「2020年東京オリンピックに向けて沖縄から羽ばたく若い選手たちを応援しよう」という名目で毎月積み立てし、楽しく酒を酌み交わす仲間たちの会として継続してきた。

これまでも池原選手が加入した三重バイオレットアイリスがクラブチームならではの資金難に苦しんでいた時期もあって、彼女の代表活動やプレーオフ出場を決めた時などに支援をしてきたし、そのほか金城ありさ選手(佼成女高→東女体大。金城さんの次女)が海外チャレンジした時も何度かサポートしてきた。 小学生のチームメイトだったりした子どもたちを、我が娘と可愛がり、夢を託してきた父親集団なのだ。

16チームによるデンマークリーグに加え、国を越えてのチャンピオンズリーグでもベスト8を目前にしたグループステージまで勝ち上がるなど、超ハードスケジュールをこなしながら「タフ」という言葉がぴったりの1シーズンを戦ってきた。

「今シーズンは終了ですが、5月3日からPokal kampというラストの試合があります。これはカップ戦みたいなものです。それが終われば、もう試合はありません。今シーズン、この仲間と最後の試合になるので、もちろん勝ちにこだわりながらも試合を楽しみたいと思います」と前向きな言葉でしめくくってくれた。

来季は日本人トリオで旋風を!

そして、新しい陣容で戦う来シーズンは、ご承知のとおり角南唯選手と亀谷さくら選手が加わってNFHの日本人トリオが誕生し、ますますその動向に注目が集まるところだ。
おりひめJAPANの一員として戦う今冬のアジア選手権、来年の世界選手権と熊本開催のビッグイベントも楽しみいっぱい。6月23日群馬でのポーランド代表とのJAPANカップ出場となれば、まさに凱旋帰国となる。
これらもますます応援したいもの! がんばれセイちゃん!!