12月17日午後、世界選手権派遣メンバーの発表と壮行会が開かれた味の素トレセンに、ハンガリーから帰国した徳田新之介選手(24才)の元気な姿があった。1時間前に着いたという。
昨年2月にハンガリーに渡り、ハンガリー1部リーグのダバシュの一員になった。筑波大で1年先輩の田中圭選手とともにプレーし、2年目を迎えた今シーズンは日本に戻った田中選手の分もとハッスルプレーを見せた。
モヤモヤ感を吹っ切って
9月のリーグ開幕当初は「得点王を狙いたいと思うほど絶好調でした」と本人が口にするほどチームの得点チャンスに絡み、今シーズンの大ブレイクを予感させた。
しかし、リーグに入って2、3試合が経過すると途中出場、それも多くのプレータイムを得られずにベンチを温めるケースが続いた。
「これまでのキャリアでこんなに長く試合に出られずにいる経験がなかったので、コートに立つ時のメンタル面で難しさを感じました。試合に出たら爆発的な成績を残さないといけないんですが、やっぱり失敗を怖がってしまったりとモヤモヤ感がつのりましたね」
代表合流で意気込み新た
そんな彼に転機となったのが10月後半、ヨーロッパの「ナショナルウイーク」でスウェーデン、フィンランドに遠征した日本代表と現地合流し、8月のドイツ、ブラジル代表戦以来2カ月ぶりに”彗星JAPAN”の一員として戦ったこと。
「代表のみんなと一緒に戦って気持ちが吹っ切れた」という徳田選手は、ハンガリーに戻ってからは「気持ちを前面に出し、笑顔を作りながら楽しくプレーするのが自分のスタイル。ミスを恐れずに思い切ってプレーすれば結果がついてくるはず」と開き直ってリーグ戦に臨んだ。
そして迎えた11月2日のセゲド戦では、やはり途中出場だったが、持ち前のスピードあふれる鋭い攻撃を駆使して5得点をマーク。
首位を独走する強豪相手に「楽しめた」と振り返るこの試合では、目の肥えた本場のファンから「あのすばしこい日本人はなかなかやるな」と絶賛され、対戦したセゲドの監督にも「あの右バックは要注意だった」と言わしめるほどの活躍ぶりだった。
生きる道はスピード!
同じライトバックにはモンテネグロ代表のパワフルな左腕アタッカー、イバン・ペリシッチがおり、彼の控えに回って途中出場の状況が続くが、「自分の技術面が足りないだけだから」と割り切り、試合となれば「いつでもOK!」と監督からのゴーサインを待つ徳田選手だ。
ダバシュは現在3勝1分8敗で14チーム中10位と下位に甘んじており、残るシーズンで上位浮上に導く起爆剤になってほしいもの。
ガツンガツンと豪快なシュートを打ち放つ彼らと同じプレースタイルではまったく勝負にならない。身長で20㎝ほど下回る徳田選手の生きる道はスピードであり、さらにその最大の武器に磨きをかけてのチャレンジが続く。
「苦しい時に点を取りたい!」
「まだまだ満足などできません」という彼だけに、この世界選手権にかける思いは強く、なんとしてもインパクトあふれるプレーで、日本を、そして自分自身をアピールしたいと意気込んでの代表合流だ。
2年前のフランス大会に続く2回目の世界舞台に向けては「チームが苦しい時に点を取りたいです。それが海外で大きな選手相手にやってきた自分の役割だと思っています」ときっぱり口にした。
ダバシュとの契約はシーズン終了となる来年6月まで。その後のことは海外でプレーしたい気持ちもあるが、まだ白紙の状況という。
ともあれ、”黄金の左腕”がワールドステージでまばゆく輝くことを期待するのみ。「徳Q」に熱い応援エールを送りたい。