宮城インカレで7連覇を達成した大体大の戦いぶりをつぶさに見て、この日本選手権での快進撃を確信していました。
それほど大体大は強かった! まさに学生界では敵なしで、今回、おりひめJAPANの主体となる北國銀行との対戦で9得点を奪った左腕のRB中山佳穂選手や的確なゲームメイクで躍動したCB相澤菜月選手らの働きは群を抜くものでした。
近来になく関心が高かったこの日本選手権決勝。それは名将・楠本監督率いる大体大が日本リーグ勢に3連覇して決勝に勝ち上がったことにほかなりません。
結果は27ー29で北國銀行に惜敗し、学生勢として33年ぶりの日本一はならなかったものの、大体大と中山選手らの実力、勢いが大きくクローズアップされました。
この2年足らずで楠本監督と大体大セブンは堂々たる実績をあげてきました。国内では学生リーグ、インカレを破竹の勢いで駆け抜けたのは言うまでもなく、黒星を喫したのは前回の日本選手権準決勝で優勝したソニーセミコンダクタに敗れた1試合(25ー30)だけ。
国内外の実績、アピール度は文句なし
海外での活躍もめざましいものがありました。昨年7月の世界ジュニア選手権で優勝候補のフランス(2位のノルウェーに延長さ負け)に決勝トーナメント初戦で25ー29と食い下がりました。
この敗戦で14位に終わりましたが、フランスを最後まで苦しめ、特に中山選手が51得点(7試合)をマークして得点ランキング4位となり、7.29の得点アベレージも2位と、その存在が大きく際立った大会でした。
さらに直後にあったクロアチアの世界学生選手権で歓喜の初優勝を達成し、今年7月の東アジアU -22選手権でも韓国を破って栄冠を獲得しました。
そうしたアンダーカテゴリーの日本代表チームの快進撃を支えたのは楠本監督のもとで躍動した中山、相澤、GK榎選手ら大体大セブンだったのです。
中山選手は世界選手権直前のJAPAN CUPブラジル戦で膠着状況の中で2得点をマークして確かな存在感を示しました。
おりひめJAPAN登用の材料として、これ以上のインパクトあるアピールはなかったはず。もちろん経験豊富なメンバー主体で戦うことは否定しないものの、国内外でこれほどまで素晴らしい結果、実績をあげている俊鋭たちを抜擢しない強化体制にもどかしさを感じたのは私だけではなかったでしょう。
特に、21人の大会エントリーに名を連ねた中山選手が1度も世界舞台に立つことがなかったことに不満、疑問の声があがりました。
当然です! 大体大と中山選手の実力は本当のホンモノでした。この日本選手権で日本女子界の戦力図が塗り替えられ、時代が動いたのは明らかであり、もはや学生界を日本リーグ勢の下にランク付けする感覚や代表強化は改めざるを得なくなったのです。
日本女子の戦力図が塗り替えられた!
年が明ければ東京オリンピックへ待ったなしの強化が始まります。熊本を戦ったメンバーに勝るとも劣らない、勢い、そして伸び代のある若い選手たちを加えての強化となれば臨戦体制に弾みがつく期待も高まるに違いありません。
今大会、ハンガリーなどは平均年令24歳の若い陣容で熊本に登場し、中山選手と同じ20歳前後の逸材が10人余りもエントリーされていたのには驚きました。出場が有力視される東京オリンピックや次回のスペイン大会での躍進が期待されています。
前回、今回とキルケリーJAPANが一定の成績を収めたのは大いに評価できるものの、来年の東京オリンピックでメダル争いに絡もうとするには、現状の戦力を大きく嵩上げする圧倒的なパワーが不可欠!
それが中山、相澤選手らの若い力であるのは言うまでもなく、さらには国体やこの日本選手権で大活躍したベテラン左腕の藤井紫緒選手(大阪ラヴィッツ)らも選考レースに加えてもいいのではないでしょうか。年令に関係なく強いものはいい、素晴らしいものは素晴らしいのです!
いいものはいい! 素晴らしいものは素晴らしい!
また、おりひめJAPANに大きな不安要素があります。横嶋選手、原選手、板野選手とケガによる戦線離脱が続き、この日本選手権でヒザを痛めて途中退場した河田選手の状態も心配されます。東京オリンピック本番を半年後に控え、今後のケガなどのアクシデントは致命的な戦力ダウンにつながります。
短期決戦の備えとして、ダメージを極力小さくし、早期復帰を可能にするような治療法の受け入れ、要請など、思い切った姿勢が求められるのではないでしょうか。
何度も言いますが、いいものはいいし、素晴らしいものは素晴らしい! メンツとか過去の慣例にとらわれることなく、絶対必要なものを躊躇なく取り入れてこそ東京オリンピックの展望が開けてくると思います。