4月21日の関東学生ハンドボール1部女子の早大ー桐蔭横浜大がスコアミスによる混乱で「再試合」となる裁定が出された。ミスは必ず起きるものだが、そうしないための確かな対応措置を求めたいとして当日の「事件」の経緯を関係者からの複数の証言を得て検証してみた。

スコアミスで早大―桐蔭戦が紛糾

4月21日の関東学生ハンドボール女子1部リーグ初日、早大ー桐蔭横浜大戦の得点結果をめぐって大混乱が起きた。

試合は「21ー19」と桐蔭2点リードで終了したが、実際は「20ー20」のはずと早大サイドから猛抗議があり、試合後ビデオによる検証で審議するとの判断がなされて試合結果は「保留扱い」とされた。

早大が抗議したのは、前半序盤4ー3と桐蔭1点リードの場面からの早大4点目のゴールが自らにつかずに桐蔭の得点とみなされ、「5ー3」と桐蔭2点リードなったシーン。

電光掲示を見たスタンドからも「点数が違っている!」と声が飛んだほどで、当然のように早大ベンチの抗議があって試合は5分ほど中断された。

そこではオフィシャル席と協議して「5ー3が正しい」と確認した担当レフェリーの判断で試合進行が優先され、そのままの点数で再開された試合は11ー7と桐蔭4点リードで前半が終了した。

早大の抗議で「保留試合」に

ハーフタイムになって早大サイドは再び抗議。スコアブックと合わせてビデオ撮影した動画も確認してほしいと強く要請した。

これに対し、事態を重く見たレフェリーは、双方のスコアブックによる点数確認を求めたが桐蔭サイドがこれを拒んだため、関東学連事務局及び同審判長と連絡を取って善後策を協議し、「試合後にビデオ検証する」こと、そして「点数を保留する」ことを両チームに伝え、後半スタートに踏み切った。

そのため後半は桐蔭が「11ー7と4点リード」、早大は「8ー10と2点ビハインド」を意識しての戦いとなったが、一時は電光掲示上で7点差まで開いていた桐蔭のリードが終盤に入って早大の反撃で縮まり、終わってみれば「21ー19」でタイムアップとなった。

本来なら引き分けで「勝点1」を得られる早大とすれば一歩も引くわけにはいかない。桐蔭サイドにも一度は「5ー3」が正しいとして再開し、そのスコアで戦った経緯にこだわりを持ちたかった。

裁定委員会がミス認めて結論

そして、関東学連は早大からの提訴もあって2日後の23日に裁定委員会を開き、ビデオ映像を検証した結果、早大の主張どおりの「20ー20」が確認された。

その結果、両者引き分けとする見方があった一方で、試合を管理したTDを含めたオフィシャルミスがあったこと認めた上で「5月初めに再試合を行う」ことを両チームに通達し、学連ホームページにもその旨がアナウンスされた。

以上、当該の試合に関わった複数の人からの証言を集めて一連の状況をまとめた。

早大からの抗議に対応したレフェリーに対し、「ランニングスコアをつけていないレフェリーの責任だ!」と罵倒に等しい批判の声を浴びせた一部関係者がいたが、「試合中の得点管理はTD・オフィシャルがする」のは明白なこと。

目まぐるしくコート上でプレーが展開する中でレフェリーに得点管理を求め、それをミスと断定するのは言語道断だ!

蘇る3年前の大事件!

スコアミスについては3年前の高校選抜大会で両校優勝となった「事件」が鮮明に蘇ってくる。

準々決勝のスコアミスを運営側が認めながら、そのまま大会を継続させたことより、決勝戦が前半で打ち切りとなる後味の悪い結末を迎えた。

今後に同じような禍根を残さないためにも、TDの任務を含めた試合運営を厳正に見直し、そして誰もが納得する改善策を打ち出してほしいものだ。

3年前のあの時、大会現場に居合わせた1人として「オフィシャルミスは必ず起こりうるもの」と声をあげたし、スポーツイベント・ハンドボール編集部も詳しく「事件」を検証し、悲劇を繰り返さないための提言リポートを特集したが、もう一度その記事をみんなが読み返し、今後への指針を求めるべきだ。

厳格な見直しと改善策を

引き分けとせずに再試合とした裁定には多くの意見が分かれよう。

しかし、「20ー20」は紛れもない事実だった。選手たちがこの試合に全力投球したことも言うまでない。

その結果が「無効」にななり、すべての得点も消滅した。

ある選手は苦しい練習を1年間がんばり抜き、念願のユニフォームを着てコートに登場。そして夢にまで見た学生初ゴールを決め、思い切りガッツポーズを築き上げて笑顔を輝かせた。

一生の思い出に残る「記念のゴール」だったが、その2日後に「幻のゴール」となる非情な結末を知ることになった。

幻になった記念のゴール

それでも、このことで彼女の「幻のゴール」が多くの人の心に刻まれ、それが確かな未来の一歩につながるなら、汗の結晶も価値が出てくる。

その「1点」がなかったら、大きな波紋を呼ぶことも、オフィシャルミスも検証なく見過ごされたに違いないからだ。

いつまでも「記念のゴール」としてその胸に生き続けてほしいと願わざるをえないーー。

「事件」の顛末をリポートした2015年スポーツイベント・ハンドボール5月号特集記事⇃