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大詰めを迎えた関東学生春季リーグ1部女子は8チーム総当たりの1次リーグを終え、上位(決勝)リーグに進出したライバル3チームが激しい優勝争いを展開。今週末(5月19、20日)の2試合の行方にすべてがかかっており、東女体大が優勢とはいえ、僅差で追う東海大、筑波大にも逆転優勝の可能性は充分。海老原加英選手(筑波大・写真左)と眞方彩帆選手(東海大・写真右)という、チームのリーダー格となって躍動する“三郷の新星”コンビが充実のプレーを見せているからだ。進境めざましい両選手にスポットライトを当ててみた。
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最終2試合で逆転優勝狙う
大詰めを迎えた関東学生ハンドボール春季リーグ女子1部の戦いが熱気を帯びている。
5月5日の1次リーグ第5週で東女体大と東海大が4戦全勝で対決し、序盤から追いつ追われつの攻防が展開された結果、東海大が21ー20と接戦を制して単独トップに立った。
その翌週に東海大の進撃に待ったをかけたのが筑波大。前週の桐蔭横浜大戦で初黒星をつけられたが、昨秋女王の意地を見せて東海大を28ー23と退け、上位戦線に踏みとどまった。
これで東女体大を含めた3チームは第6週で5勝1敗で一線に並び、このあと1次リーグ最終の第7週で東女体大が筑波大に22ー20と競り勝ち、東海大が早大戦をものにして桐蔭横浜大を含めた4チームが13日からの上位(決勝)リーグに突入した。
そして東女体大が桐蔭横浜大に21ー14と快勝すると、筑波大ー東海大は両者譲らず21ー21と引き分け。この時点で①東女体大3勝1敗(1次リーグの結果を含む)②東海大2勝1分1敗③筑波大1勝1分2敗の順となった。
春のクイーンの座をかけた今週末の最終2試合は3チームにとって一瞬たりとも気を抜けない戦いとなる。東女体大がわずかに先行しているとはいえ、追撃する2チームもチャンスは充分。とくに筑波大では海老原加英選手、東海大も眞方彩帆選手と、ともに埼玉県三郷市出身の2選手が逆転優勝のキーマンとして充実したプレーを見せているのが目につくからだ。
学生ラストイヤーで最高の喜びを!
2人は三郷ハンドボールクラブ(HC)ー三郷北中の同期生。海老原選手が県立大宮高、眞方選手は埼玉栄高を経て現在に至り、最上級生となった今シーズンはそれぞれチームリーダーへと成長を遂げた。
戦前の下馬評では優勝レースの中心と見られた筑波大にあって、エースヒッターの青選手ら主力に故障者が相次いだこともあり、本来の右バックから左バックに回った海老原選手はポイントゲッター役も任された。
ヒザを痛めてフル出場ができなかった1次リーグ中盤の桐蔭横浜大戦は敗戦の悔しさを味わったが、翌週の東海大戦では積極的なシュートで再三得点に絡み、ポストやサイドを生かすゲームメイクも光ってチームの勝利に貢献した。
「今はロングをどんどん打てと言われています。東海大戦は最初のシュートが自分のいいタイミングで打てたのでイケルッて思ってプレーできました。
試合の要所で得点を決められて自分なりに良かったと思っています」と振り返った海老原選手。負ければ優勝が絶望的となる上位リーグの東海大との再戦も懸命の奮戦で引き分けに持ち込み、連覇に望みをつないだ。
一方の眞方選手もコート上で強い光りを放っている。相手のパスやシュートミスを一瞬にしてゴールに結びつけるスピードプレーと多彩なシュートテクニックは圧巻。ビシリと小気味よくネットを揺らす時があれば、GKの頭上をふわりと浮かしたり、 足元をスピンでかわすなどしてチームを勢いづけた。
「上位でチャレンジできることは嬉しいです。最も大事な仲間たちと精一杯の戦いができのは本当に幸せですし、皆さんに観ていただき、お声がけいただけることに心から感謝する毎日です。でも、もっと自分たちらしさを表現できるようにがんばります」と7シーズンぶり2回目の栄冠獲得に闘志を燃やしている。
対照的なタイプで切磋琢磨
中学校まで同じチームで力を合わせてきた両選手だが、三郷HCの半村茂夫監督や三郷北中時代の中田智巳監督(現在は吉川南中)によると「2人は対照的なタイプだった」と口を揃える。
「彩帆(眞方選手)は瞬発力があって下手でもなかったけれど、あまり自分を前に出さず、遠慮するプレーも目立ったので、なかなかレギュラーになれなかったです。でも6年生あたりから自覚が出てきて、中学、高校と進むにつれてメキメキと成長しました。自分で工夫しながらプレーの幅を広げていった感じです。
加英(海老原選手)は瞬発性はない代わりに、アドバイスを素直に聞いて自分なりに考えながらコツコツと力を伸ばしていきました。樹(トヨタ車体・吉野選手)のような個人としての能力はないけれど、試合の流れの大事なところをわきまえ、考えるプレーをするということでよく似たタイプですね」と半村さん。
中田さんは「加英をひと言でいうなら頭脳的。相手との駆け引きなども優れていたし、チームのコントロール役ということで、いつも冷静で頼りになる選手でした。
彩帆の方は瞬発力があり、脚の速さという点では1年上の玲伊奈(三重バイトレットアイリス・團選手)に勝るとも劣らないと思います。小柄ながら腕の振りの速いミドルシュートにも得点力がありました」と当時を振り返る。
冷静なプレーを持ち味とする海老原選手は、つねに学力トップで文武両道を貫き通した背景があり、県内有数の進学校で知られる大宮高時代には埼玉栄と浦和実の私立2強に割って入り、県2位で関東大会出場権をものにする原動力となった。
一方、瞬発力、スピードを生命線とする眞方選手の健脚は母の久美子さん譲り。ちなみにスピードスター團選手の母・良美さんとは同じ高校陸上部の400mリレーメンバーを組み、3走が久美子さん、アンカー良美さんで、ともに埼玉県を代表するスプリンターだったとか。東海大2年生時で世界ジュニア選手権に出場してレギュラーの座をつかんだが、試合中に左ヒザじん帯断裂のアクシデントに見舞われ、ほぼ1シーズンを棒に振ったが、こうして力強くカムバックした。
努力を重ねて大きく開花!
そしてタイプの違いはあれど「つねに自分を伸ばそうとする努力家」としての共通点をあげた恩師たちだ。それが石井優花選手(オムロン)や前述の吉野選手、團選手を追うようにじっくりと実力をつけ、今では関東学生界を代表する“三郷の新星”として名乗りをあけた要因だろう。
2人にそれぞれの印象を聞いてみた。
「冷静な判断ができ、とても良いロングシューターです。同じ三郷の出身でもあるのでお互いに切磋琢磨できたらいいなと思っています」と眞方選手が言えば、「ずっと同じチームでやってきたとはいえ、試合となればやっぱり負けたくないし、いいライバルであり続けたいと思っています」と海老原選手も、その存在を一番意識する選手にあげた。
将来について「今は大学でのプレーに没頭しており、具体的なことはまだまだ煮詰まっていません。でも、機会に恵まれれば、積極的に将来の構想を描いてみたいです」とプレーヤーとしてのさらなる可能性を求めようとする眞方選手に対し、海老原選手も「今後はハンドボールをもっと深く知り、研究したいという思いも強まっていますが、まずは4年生最後のシーズンを一番いい形で終わるためにもチームみんなと力を合わせてがんばりたいです」としっかり前を向いた。
全幅の信頼を置く両監督
最後に2人の現在を適格に評価できる両チーム監督のメッセージをご紹介しよう。
はじめに東海大・栗山雅倫監督の眞方選手評。
「信頼し、尊敬するキャプテンです。
決して言葉数は多くはありませんが、日々の地に足のついた確かな有り様は、チームからの絶大な信望につながっていると思います。彼女が東海大学で自身を磨くことを選んでくれたことに改めて感謝しています。
プレーヤーとしては、スピードをベースとした鋭いパフォーマンスを信条とし、多彩なシュートスキルを武器とする将来性豊かなプレーヤーであると思っています。
とかく女子プレーヤーのシュートスキルの幅は、男子のそれより劣るものですが、彼女は積極的にスキルの幅を広げる努力を惜しみません。彼女の放つ観ていてもワクワクするようなバックシュートや逆スピンシュートは、一見トリッキーなシュートのようにも見えますが、実は豊富な練習量を背景とした、きちんと確立された理にかなったシュートです。
また、とかく彼女のパフォーマンスを評価される場合、攻撃面に着目されがちですが、防御の機能が大変豊かなプレーヤーであり、いわゆるスキルフルなディフェンダーです。積極的な防御機能を重視する我々チームにとってももちろんのこと、こういったスキルは日本のプレーヤーが国際舞台で活躍するための重要な要素であると確信しています。そういった意味でも将来性豊かなプレーヤーです」
続いて筑波大・山田永子監督の海老原選手評は
「物静かで控え目なチャレンジャー。あまり口数は多くないが分析眼に優れ、的確なひと言を発します。
独特のタイミング、そして長い手足から繰り出されるフェイント、シュートは逸品でGKから嫌がられています。時々、長い脚が絡まって自爆しますが、、(笑)
これまでは右バックを専門にプレーしてもらってきましたが、ケガ人の関係で3月末から左バックを担ってもらっています。まだまだ自信がないようなので、試合を通して自信をつけてもらえたらと思っています」
素晴らしい指導力にも改めて敬服
2人がいかに素晴らしく有能なプレーヤーであるかが分かり、そして彼女たちをしっかり育てた半村さん、中田さん、三郷クラブコーチの菊池久美子さん、さらには大宮高に新任1年目から新入生の海老原選手とともに強豪チームへとステップアップさせた羽角(はすみ)健二さん(今春から三郷北高に赴任)らの卓越した指導力に改めて敬意を表するばかりだ。
まずは今週末の優勝争いに熱い視線を注ぎながら学生ラストイヤーの活躍ぶりをワクワクしながら見守りたい。