「all for one, one for all」

「私たちは今、ためされている。

この壁を乗り越えて

思いを結果につなげることを」

--7月5日、香港の東アジアU-22選手権に出場したユース代表(U-19)が、この言葉のもと心を1つにして試合に臨みました。フル代表メンバーで陣容を組んだ台湾が相手でした。

なかなか攻守の歯車がかみ合わずに台湾の先行を許し、後半20分あたりで4点のビハインドをつけられる劣勢を必死の反撃で盛り返し、勝利こそつかめなかったものの26-26の引き分けに持ち込みました。

「all for one, one for all」--試合前、あふれる思いを言葉にして日本に伝えたかった彼らでしたが、あえてそうすることをやめました。

ただただ一生懸命に戦う姿をアピールしよう。そして、純粋にハンドボールを愛する1人の仲間のため、チーム全員が結束して大きな壁を乗り越えようと心に決めました。その高揚感は半端なかったそうです。

そう、いまメディア、ネットなどでひどいバッシングを受けている仲間(ここではT選手と呼ばせてください)を救い、みんなで守りたかったのです。

だれもがT選手が、そんな誹謗中傷されるような男ではないとわかっていたし、信頼する仲間だと信じていました。

彼も自分にできることはただ1つ。チームの勝利のために仲間たちと結束して戦い抜こうとしました。

国を代表する相手を前にして簡単に結果は出せませんでしたが、出場した3試合に自分のできる限りのパフォーマンスを発揮したT選手です。

 

VTRをしっかり検証してみて

問題となったインターハイ大阪府予選・男子決勝戦のVTRをしっかり検証しました。

ライバル両チームによる1点を争う白熱した展開に、コート内外の興奮がどんどんエスカレートしていきました。

そんな中でも、T選手は終始冷静なゲームコントロールでチームを勝利に導くよう力を尽くしていました。

とくに警告や退場の多発はすぐにもピンチに直結します。そのためチームメイトにマイペースで戦うよう声をかけ、熱い闘志を内に秘めたプレーに徹していたのが印象的。ゴールゲッターから真のチームリーダーへ、多くの人がその成長ぶりを認めていたのが理解できました。

その結果、後半なかばまで先行された苦しい展開を挽回しての1点差勝利。チームがマイペースを貫き通したことは1試合トータルで警告、2分間退場とも1回ずつという数字に現れていると言えるでしょう。

テレビ映像で切り取られた「途中のラフプレー」は、実際に見てみると彼の左腕は相手選手の首にかかっておらず、目の前で見ていたレフェリーも「ノーファール」としてDF選手のクレームを退けています。

ましてや彼は「故意の肘打ち」とされるプレーにもいっさい関わっていません。

1試合を通した映像では、彼と彼のチームがこうまで大きな批判の対象になってしまうのか首をかしげるほどでした。

しかし、「故意」や「偶然」のいかんに関わらず、相手を悶絶させるまでのラフプレーに至ったのだから、少なくとも退場などのペナルティが与えられていいはずでした。そのことは大阪高体連ハンドボール専門部が当該選手とチーム、レフェリー、TDオフィシャルに厳重注意を与え、すでに選手、チームの謝罪も済んでいます。

多くの批判の矢面に立つ「犯行予告」について、ここでは多くを触れませんが、もちろん許される言動の域ではないし、本人も深く反省していると聞いています。しかし、その1シーンだけで彼を全否定し、未来をも奪いかねないバッシングにつなげるのはどうでしょうか。また「予告」とするには時系列的にそぐわないものもあります。

メディアで集中砲火され、ツイッター、YouTubeなどネットでは実名をあげた悪意の個人攻撃がいまだに続いています。仲のいい若者同士のおふざけ会話も、前段階を省かれ、その1シーンだけ切り取られ、意図しないものと結びつけられると、とんでもない結果を招きます。それが動画の怖さ、メディアの怖さ、ネットの怖さなのです。それは、おふざけでも冗談でもなくなります。

図り知れないほど大きな代償を伴った今回のことを、ハンドボールにとどまらず全スポーツ界あげて教訓とし、若い世代にしっかり教育していくのが急務と言えるでしょう。

 

私たちは今、試されている…

昨夏の世界ユース選手権で、高校生でただ1人の代表メンバーとなったT選手は、レギュラー格として史上初のベスト8入りに貢献、今春の高校センバツでもチームを3位に押し上げる原動力になりました。

今後のターゲットは8月のインターハイ、そして9月ヨルダンで開かれるアジアユース選手権になります。

アジアユースは上位4位内に入って世界切符を手にするのが使命であり、前回の世界ユースでベスト8入りを果たした彼のキャリアは不可欠です。

このまま彼を果てしなく追い詰め、未来まで奪っていいのでしょうか。

そのくったくのない笑顔と底知れぬハンドボールへの情熱を知っている身として、なんとしてもT選手の名誉と信頼を回復させたいと思っています。

「私たちは今、ためされている。

この壁を乗り越えて

思いを結果につなげることを」

--そう誓い合った仲間たちと別れ、8日の大会終了を待たずして香港を離れたT選手。見送ったスタッフ、選手らが涙を流していたと伝え聞いています。

メンタルの強い彼ならきっと雄々しい姿を再び見せてくれると信じたいです。こんな心温かいスタッフ、そして、ユースや国内の仲間たちがたくさんいるのだから。心労の極地にあるご両親も命をかけて我が子を守り抜くと言っています。

あとは全ハンドボール関係者のご理解とサポートが必要です。「ハンドボール」を愛してやまない彼を救い、守ってあげてください。そして「ハンドボール」をこれ以上辱めないよう、どうか力を貸してください。切にお願いします。

HANDBALL@STATION管理人 南木貞夫

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