ハンドボール王国・デンマークに研修留学している阿部直人さん(法政二高)が現地でよ"気づき"をリポートする「From Denmark」。今回は松ヤニ使用をベースにしたスローとキャッチがテーマです。
強烈な松ヤニの粘着力
デンマークでは、日常の練習や試合はすべて体育館です。
U–12までは、松ヤニは使用していません。U–14(13歳、日本での中一)から松ヤニを使用しての練習、試合が始まります。
こちらで使用している松ヤニの粘着力は強烈です。そして選手たちも、指先にちょこっとつけるだけでなく、手のひらにも、そしてボールにもたくさんつけます。そのボールの表面は、「ベタベタ」では表現しきれません。布ガムテープの粘着面みたいな感じです。4月に来た当初、僕は練習のパス出しの際に、つきすぎて、よく足元にパスしてしまいました。
試合のリバウンドのときに、ボールが「コロコロコロ、ピタッ」という感じで止まるシーンをよく見ます(僕は、よくリバウンドを取る練習をしていました。ディフェンスしきった後にリバウンドの態勢を作るまで(あの練習は国内仕様だったのだなぁと)。
冒頭動画をご覧ください。ゴール横のスポンサーの壁にあたった後、ボールがピタッと止まってしまうのがおわかりいただけると思います。
手のひらも密着させて鷲掴み
そして、手首、肘、肩の使い方の練習方法が確立されており、腕を目一杯しならせるような投げ方に育成していきます。シュートを入れる競技なので、投げ方の確立一つだけで、国として、十分なほど大きな戦術になっていると思います。
ボールの回転は、なんと表現したらよいか難しいのですが、カーブのようなスクリューのような回転です。アメフトのパスのような…(この表現も適しているかわかりませんが)
握り方は、手のひらも密着させて鷲掴みのように握る選手が多いです。これだけの粘着なので「握る」という表現も違うような気がします。
力強く握る必要がないから手首もロックされず、可動域が広くなるのだと思います。腕をしならせて、そして手首も目一杯使えます。
体格の大きい、力のある選手が思いっきり投げているだけではないことは、本当によくわかりました。
片手キャッチの頻度に驚き
キャッチ。
このようなボールで、そして手のひらにも松ヤニをつけているので、手のひらで受けています。速いパスをキャッチするときは、鈍い低い音がします。
片手キャッチも容易にしています(野球のグローブでキャッチするような感じで)。ポストプレイヤーだけでなく、バックプレイヤー同士のパス、そして速攻でのロングパスなども。
試合での片手キャッチの頻度は、日本とは大きく異なると思います。(特に中高生は)
日本では、中学生・高校生のほとんどはグランドで練習。体育館で練習や試合をするときは両面テープを使用していると思います。
中高の先生方は、自分のチームで成果をあげるために、本当にいろいろな工夫をされていると思います。
世界に通用する「日本式」構築を
これだけ環境やボールが違うので、当然、こちらの育成方法をそのまま日本に当てはめることはできないと思います。
しかし、最終的に国際試合ではこのようなボールで、そして相手より多くのシュートを決めなければ勝つことはできません。
日本の中高生の環境を急に変えることは難しいと思うので、この環境の中でどのように育成していくのか、どのような投げ方、取り方がベストで世界に通用しうるものになるのか…
「日本流」「日本スタイル」を構築することが大切かと思っています(投げて、シュートを入れる競技なので)。
※年末年始に一時帰国しますので、「From Denmark」はしばらくお休みします。1月は男子世界選手権に観戦に行く予定なので、そのことも含めお伝えします。
・阿部直人(あべ・なおと) 法政二高ハンドボール部監督 学校の海外研修制度で今春からデンマークに渡り、指導、勉強、試合観戦とまさにハンドボール漬けの毎日。ハンドボール王国での気づきを「From Denmark」でリポートしています。