ハンドボール日本代表選手がヨーロッパでプレーするべき理由。「トレーニング編」

3つの原理と5つの原則

僕は常々、ハンドボール日本代表選手は全員ヨーロッパでプレーするべきだと話しているが、その理由について今回はトレーニング論。

トレーニングには3つの原理と5つの原則がある。細かいことは省くが3つの原理。

①可逆性の原理 簡単に言うと、トレーニングを止めたら体力は落ちるから継続して行うこと。
②特異性の原理 これも簡単に言うと、スクワットだけしたら下半身がメインでしか鍛えられないってこと(ハンドボールに関しては走る・跳ぶ・投げる・コンタクトなど全身を使うので、フィジカルが弱い日本人はウェイトトレーニング・体幹・クロストレーニング・コーディネーショントレーニング・サーキットトレーニング・ファンクショナルトレーニングなど複数のトレーニングを身体に入れていかなければならない)。
③過負荷の原理 慣れてきたら負荷・強度を上げないと成長が望めないという意味だが、解りやすく言うとウェイトトレーニングでベンチプレス100kgを挙げて、毎回100kgでトレーニングしていたら成長が無いと言う意味だが、ここがポイント。

ハンドボールでも同じレベルの選手だけで毎回同じ練習してても、劇的な成長は望めない。例えばヨーロッパでは身長2m近くで体重100kgの選手が多くいる。しかもスピードがあり動ける。彼らと毎日練習、毎回試合をこなしていたら、当たり前だけど自分も成長しないと通用しない(日本で身長2m体重100kg以上の選手を僕は知らない。

地元ニームで開催されたカップ戦でチームメイトとともに大会ポスターに登場した田場選手 スポーツイベント2003年3月号より

練習は試合に出るためのオーディション

あとヨーロッパの選手はみんなプロ選手だ。試合で活躍しなければプロは「飯が食えない」。
練習は、いわば試合に出るためのオーディション。監督へのアピールの場、つまり毎日の練習が試合に出るためのテストなのだ(試合に出れる選手は限られてるので)。
だから毎回の練習がチームメイトであっても殺し合いや戦いのような強度の高いトレーニングになる(チームメイトは生まれや人種・民族・宗教も違うし、友達である必要もない。ただチームとして勝つのがプロの仕事だから目標だけが唯一同じで、目標に向かって力を合わせる仲間)。

僕は外国人枠で助っ人として、フランスのチーム内で得点王だったけど、トレーニングでパフォーマンスが上がらないと、試合出場はおろかセカンドチーム(マイナー)に降格させられ若手と練習・試合をさせられた屈辱的な経験もした(それからは死に物狂いで毎回ベストを尽くしてトレーニングに励んだ)。

常にMAXでベストを尽くすことこそ!

日本代表選手もヨーロッパの選手(プロ選手)と毎日・毎回強度の高いトレーニングやゲームをし、常にMAXでベストを尽くさない限り、追いつくことは難しいのではないか?

ヨーロッパを戦場にしてきたレジェンドの言葉は重みがある

【田場さん略歴】本場ドイツでプレーヤー、指導者として15年もの活動キャリアを持つ同年令の植松伸之介さん〔明星大男子ヘッドコーチ、日本ユース代表コーチ)とともに、土井レミイ杏利選手ら海外でプレーするプロプレーヤーの先駆者として知られる存在。

沖縄・興南高→日体大を経て湧永製薬に加入した1998−99シーズンで日本リーグ新人王を獲得。さらなる成長を求めて1999年にスペイン留学、スペイン2部リーグのテリア・アドリアネンスに在籍して28試合に出場した。

湧永製薬に復帰後も海外挑戦の夢を追い続け、2002年にフランス1部リーグのウサム・ニームに移籍し、本場の激闘に揉まれること3シーズン。チームの主軸として活躍し、 シーズン得点ランキング3位に名を連ねたことも。
日本代表BPの切り札として2003年9月のアテネオリンピック・アジア予選に出場したが、宿敵・韓国との激闘の末に惜しくも引き分け、得失点差で無念の敗退。「日本選手の海外経験の乏しさを噛み締めた」といまでも悔しげに振り返る。

フランスなど強豪クラブのオファーを受けながらも郷里沖縄にプロチームを作りたいと宣言して2007年に琉球コラソンを立ち上げた。その後、ハンドボールから一時離れたが、現在は自身の豊富なキャリアをいかし、サッカーなど海外スポーツと日本の若者たちとのバイブをつなぐビジネスに身を置ながら、心身の健康を極めるべく連日トレーニングに励んでいる。

トレーニングに励む田場さん