彗星 JAPANの新キャプテンを拝命

6月2日の公開練習インタビューより

6月2日の公開練習後の共同インタビューで新キャプテンは「メンタル」「プロ意識」「ポジティブ」「楽しみたい」の言葉を何度も口にした。

反映させたいプロ意識!

「ダグル(シグルドソン監督)が自分に求めたのは第一にメンタル面。貪欲に勝利をめざしていくプロ意識だったりポジティブな考えでしょう。
だとしたら、試合となれば、きれいなハンドボールは必要なし。ましてや国と国との戦いならなおさらです。試合前の選手は戦場に行く兵士と同じで、目の前にいるヤツをどうやって倒すかという、僕はフランスでずっとそうやってきました。
そんな戦う気持ち、強いメンタルがあればアジアでは負けないメンバーが揃っています。まだまだ優しすぎますが、若い選手の成長だったり、よくなっているところもたくさんあります。なにごともポジティブに捉えて楽しみたいです。
そして1年後のオリンピックよりも、まずは来年初めのアジア選手権で勝つことにこだわりたいです。決勝でカタールと優勝を争うところまでいき、しっかりと世界選手権切符を取ること。それをオリンピック前の大事なターゲットにしたいと思います」

シグルドソン監督からキャプテンの指名を受けたのはその2日前。部屋室に呼ばれてのオファーに「びっくりした」が、即答を避けて前キャプテンの信太弘樹と渡部仁の同期2人に相談して心が決まると、メラメラと闘志が燃え上がったという。

所属したフランス2部のシャルトルはリーグ優勝して1部昇格を決め、プレーオフも制して昨シーズンを締めくくった。当然、新シーズンも世界最高峰クラスのフランス1部を舞台に主力として戦う選択肢もあったが、彼が決断したのは「国内(大崎電気)でプレー」することだった。

新シーズンは大崎電気でプレー

「フランスの活動がベースになると海外遠征の直前だとか国内合宿に参加する期間も限られてしまいます。
オリンピックまでのあと1年を僕のためだけじゃなく、チームの準備をしっかりするためのベストがなにかと考えた場合、選択は1つでした。
ダグルもそう望んでいるようにも感じていたし、こうしてキャプテンとして新たなチャレンジができるのは楽しみでしかありません」

シャルトルでプレーオフ優勝を決めた最終戦は万感の思いになったという
試合終盤に足を強くひねって途中リタイア、タイムアップ時はベンチに下がっていたが、33ー32と1点差で勝利が決まった瞬間、痛みを忘れて歓喜を爆発させたチームメイトの輪に飛び込んでいった。

プレーオフ優勝で感涙にむせんだ

プレーオフ優勝で有終の美

「フランスでのラストゲームになるということで、試合前からなんとも言えないほど心が高ぶっていました。(プロ生活6年を含めた)フランスでの7年間の思い出が蘇ってきて、これで最後、それも優勝という最高の終わり方ができたと思うと、自然に涙が溢れ出し、泣き崩れてしまいましたね」

日体大時代にヒザに故障を抱えていたことから日本リーグチームの勧誘を断り、大学卒業後は父・ダニエルさんの郷里フランスに単身渡った。
フランスの言葉や文化を学ぶのが目的でハンドボールをするのは頭になかったが、よほどフランスの水があったのだろう。あれほど苦しんでいたヒザの痛みがすっかり消え、そうして再びハンドボールの道を歩み始めたことで、フランスの名門クラブ「シャンベリー」の一員となり、そこでチャンスを射止めてトップチーム入りを勝ち取った。

日本では到底味わえないハイレベルな世界でのチャレンジだけに、さまざまな苦しみ、葛藤、ストレスにもがき続けた日々もあったが、そこでたどり着いたのが「自分は絶対できるんだとポジティブになること」だった。
ハードルを超えたあとはトントン拍子で上り詰め、シャンベリー4年目のシーズンとなった2017年には「一生の宝物」というフランス「オールスターゲーム」に出場し、あのミケル・ハンセン(デンマーク)ら世界の超人たちとチームを組んで力いっぱい躍動した。

ハンドボールの価値を上げたい

「僕みたいにプレーを一度やめた選手がそうした世界に身を置き、ましてや日本代表のキャプテンになった例など過去にあるんでしょうか。とにかく自分と日本ハンドボールの価値を上げるためにがんばるのみです」と笑顔をほころばせた。

最後に気になる質問を投げかけてみた。SNSで大きな注目を集めているTikTokについてだ。
「あれは趣味でやってるのでこれからも続けますよ。キャプテンになって辞めるつもりなどもありません。
僕のTikTokを好きでいてくれる人が多くてフォロワーも4万人ぐらいるんです。今後はハンドボールの動画も出せればなと思っています。何をやるにもクオーリティを求めるタイプなので、面白いやつを作りますよ。そこからハンドボールのファンを引き込めるかもしれませんしね」とニッコリ。

ファンも日本代表ファミリー!

ハンドボールファンへのメッセージもお願いしてみると、すぐまさこんな言葉が返ってきた。
「私たち選手やスタッフばかりでなく、代表チームは応援いただくファンの人たちもいっしょの家族だと思っています。みんなでがんばっていきましょう」

そう、日本代表はハンドボールファミリーなのだ。そんな新キャプテンと彗星JAPANをますます熱く応援したい気持ちになった。この立川でのインターナショナルウイークではそんな「アンリワールド」にどっぷりと浸ってみたい。