ドイツ・デンマーク世界選手権が間近に迫った。昨年末からポーランドとスイスで精力的な強化に励んだ〝彗星JAPAN〟は、ヨーロッパやアフリカの強豪を相手にしたトライアルマッチでチームの根幹作りはもちろんのこと、戦力の底上げを狙いとして19人の遠征メンバーに多くの実戦キャリアを積ませながら果敢な戦いを挑んだ。(写真は12月17日の壮行会とヨーロッパ遠征中の〝彗星JAPAN〟 ヨーロッパは日本協会Facebookページからシェアしました)
トライアルマッチで逞しく躍動
そんな中、私的に最も高評価したいのがチーム最年少、19歳の部井久アダム勇樹(以下は愛称のアディー)だ。
ポーランドの2試合で7得点、スイスの3試合では11得点をマークし、トータル18得点は徳田の28得点に次ぐ2番目の数字だった。
力強いロングシュートあり、強引に割って入ってのカットインシュートありと存在感をアピール。スイスでの3試合の映像でチェックする限り、その堂々としたプレーぶりは実に頼もしく、そして逞しかった。
そんなアディーだったが、じつは不安を抱えての旅立ちだった。
昨年4月に中大に進学後、関東春季リーグを戦い終えて留学先のフランスリーグ1部セッソン・レンヌに加入すると、すぐさまセカンドチームで頭角を現し、そこで最多得点するほどの活躍ぶりでトップチーム昇格が確実視されていた。
ところが9月なかば過ぎ、練習中に足首を痛めたことで長期の戦線離脱を余儀なくされた。人生初の捻挫。前拒腓及び後拒腓拒被靭帯損傷との診断だった。
3ヵ月の離脱乗り越えギアチェンジ
ケガした直後に彼がツイッターでアップした写真は足首がひどく腫れ上がり、そこでは「やってしまったことは仕方ない。身体作りのチャンスとしてがんばろう。(11月の)インカレまでには!」と気丈なコメントを残したものの、(治療目的もあり)帰国して臨んだ大阪インカレでは出場機会さえなくフランスに逆戻りする結果となった。
今回のヨーロッパ遠征は、同じくフランスでプレーする土井レミイ杏利のように現地から合流できたが、早めに国内合宿をスタートすることでチーム及び選手のコンディション調整を図りたいとするダグル・シグルドソン監督の狙いもあり、12月11日の合宿スタートに合わせて再帰国し、17日の世界選手権壮行会に顔を見せたアディーだった。
取材時では「今は正直なところ怖い気持ちもある」と話していたが、こうして雄々しく復活したことがなによりうれしかった。
彼の中学生時代のプレーを見て「史上最高のポテンシャル!」と直感し、その将来性豊かなポテンシャルにほれ込んでいた逸材だからだ。
「変わった自分をアピールしたい!」
ドイツでの世界舞台で大暴れを期待しながら12月17日のインタビュー映像を再現してみた。戦列を離れていた3ヶ月間に目いっぱい筋トレに励み、夏のJapan Cup時から体重が5㎏ほどアップして100㎏の大台に乗せたアディーがそこにいた。
こうして見違えるばかりの逞しさと野性味を加えてギアチェンジした彼が何度も口にしたのが「世界選手権では〝変わった自分〟をアピールしたい!」との言葉だ。
10日から開幕する世界本番に向け、まさしくピンチをチャンスに変えたアディーと〝彗星JAPAN〟の躍動が期待される。間違いなく日本男子は強くなっているーー。
「BREAKTHROUGH」3月放送決定!
そしてお知らせを1つ。テレビ大阪SPORTSドキメンタリー「BREAKTHROUGH」でアディー特集が放映されることが決まった。すでにヨーロッパで密着取材も敢行中とのこと。3月21日の放送もまた楽しみでならない。