6月のインターハイ大阪予選男子決勝戦での「肘打ち問題」に関して大阪高体連第三者委員会は「肘打ちは加害意図はなく事前のSNSも関連なし」との発表をした。
当然のことで心より良かったと思うと同時に、ねじ曲がったメディア報道やSNS上で誹謗中傷の嵐にさらされた当該選手の名誉と人権回復を急いでほしいと願うのみ。そんな思いを込めてHANDBALL@STATIONブログでこの問題を整理してお伝えした(写真は関西テレビニュースより)。
「加害意図はなくSNSも関連なし」
6月のインターハイ大阪府予選男子決勝で大体大浪商高 の選手が相手選手に肘打ちした問題で、大阪高体連の第三者調査委員会が、「危険性の高い反則行為だが、マークを外すためであって故意ではなかった」との調査結果を8月10日に公表し、さらに大体大浪商高の他の選手がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で「犯行予告」と思わせる投稿した件についても、当該選手は関与しておらず、反則行為との因果関係はなかったと判断しました。
今回、この“事件”の周辺取材を続けてきた者として、メディアやSNS上で集中砲火された大体大浪商高のT選手とご家族の泥濘の苦しみを知っていただけに、心から良かったと思いました。
ただ、SNSでは当時の醜悪なまでのツイートやYouTubeなどが数知れず残っており、この問題をきちんと把握していない方もほとんどだと思われます。
メディアのねじ曲がった報道から一方的な“被害者"にされたT選手の名誉と人権回復のため、皆さまのご理解をいただきたく、このブログを書きました。
一方的なメディア報道の”被害者”に
以下、この問題を整理してお伝えします。
「肘打ち行為」と「反抗予告」を繋ぎ合わせた動画は、「日大の危険タックル問題」と絡めるなど週刊現代誌にセンセーショナルに報じられて以降、情報系テレビ番組や活字メディアによる報道合戦が始まり、それがツイッター、掲示板、YouTubeなどSNSに波及して途方もなく広がりました。
まさにブレーキが壊れた暴走車!! 実名など個人情報までも晒された誹謗中傷の嵐が拡散されていく様は尋常ではありませんでした。
その一方で、私を含めてその決勝戦を1試合を通したVTRをご覧になった方たちは「素晴らしい試合だった!」と異口同音にそう語ります。
私は両チームのファイト溢れる好プレーの応酬と白熱の攻防に引き込まれてしまいました。
この試合が、こんな大問題となることが信じられないほどで、それほど両チームの選手は力を尽くし、立派に戦った印象を受けました。
問題の肘打ちシーンに関して、少なくとも退場の判定があって良かったと思いますが、同時に起こった反則プレーの対処に追われ、TDも含めて適切な措置ができなかったように感じられました。
これについては当該の選手及び監督、そしてレフェリーや大阪高体連も謝罪しており、それで決着をつけてしかるべきでした。
それが後になって大きな騒動になったのは、やはり試合前日の「反抗予告」とも思わせるSNS発信との関連を避けては通れません。
素晴らしい内容だった決勝戦!
この事実はというと、「悪質な肘打ちの実行犯」とされたT選手がそのプレーにいっさい関わっていないのは明らかでした。
さらに「反抗予告」とされた動画も本人の意思とは関係なしに下級生が撮影、投稿(友達内)したもので、それもすぐに削除されていました。
もちろん仲のいい友人同士とはいえ、そうした「おふざけ動画」をSNSにアップしたりする行為はあまりに浅はかであり、また言動の域を超えたものとして、本人たちには猛省を求めたいところです。
しかし、試合後すぐに双方の3年生メンバー同士で互いの健闘を讃え合って数名で記念写真を撮っており、それぞれ幼なじみの親たちも同様でした。
また、試合数日後には両校の2年生メンバー(肘打ちされた選手を含む)同士で仲良く食事している事実もあります。
そこには「反抗予告」などという物騒な行為、はたまた「ラフプレーの遺恨」などとはかけ離れた「ノーサイド」そして「フェアプレー」の精神が明らかにあったのです。
試合後はノーサイドで互いに握手!
さらにSNSに関わった2人の選手は、当該の決勝戦で警告、退場をいっさい受けていません。首を絞めたとされるT選手の行為をVTRで検証すると、その事実はなく、腕の根元と顔の瞬間的な接触はあるものの、すぐ後ろで見ていたレフェリーは、DFのホールディングもあって「ノーファール」のゼスチャーをしていました。
それが後日になって週刊現代誌の一方的な報道がきっかけとなり、切り取られ、つなぎ合わされた映像が一人歩きしていきます。
その結果がどうなったか、、、
もう、冗談でも、おふざけでもありません。何度も言いますが、それが動画の怖さ、メディアの怖さ、ネットの怖さです。
無残にもメディア、ネットの標的に晒されたT選手とその家族は地獄の底に突き落とされ、「ハンドボール」そのものも果てしなく辱められました。
歪められた報道に泥濘の苦しみ
言い訳などいっさい通用しません。ひたすら耐えるだけの毎日。ユース代表の仲間とともに戦っていた東アジアU-22選手権大会は、マスコミ取材を受けぬよう日本ハンドボール協会の配慮で香港から途中帰国。スタッフや選手たちとの涙の別れもありました。
それでもユース代表の植松伸之介監督はT選手のネームホルダーを自分のバックにくくりつけ、チームメートたちも毎朝のミーティングで「T選手と一緒に戦う気持ち」を確認し、心を1つにしてして戦い抜きました。
そんなT選手を家族は命がけで守りました。
できるだけ彼のそばに寄り添って対話を重ねた父親は、今回の問題に関与した我が子を含む3選手の炎天下での別メニュー練習をサポートしてひたすら汗を流したりもしました。
SNSに関しては、弁護士と相談して1つひとつ削除する作業が続けられました。それには膨大な費用と時間がかかります。YouTubeを消すのに、印鑑証明書、子のパスポート写し、親のパスポート写し、親の運転免許証写し、戸籍抄本写し、住民票が必要でした。
それでも異常なまでの拡散があったため、なかなか思うようにいきません。今でも「ハンドボール」を検索すると、依然として悪意ある書き込みが数限りなくあり、懸命な“駆除作業”が続いています。
自らの削除で早期の対応を!
そこでお願いです! アップやリツイートした本人が削除をすれば、そんな作業も費用もまったく必要ありません。自ら削除するだけでいいのです。どうぞ速やかな対応を望んでいます。
そして、苦しみ抜いた彼に「申し訳ない」と思う気持ちに加え、「がんばれ!」と温かいエールを送ってほしいのです。T選手はその決勝戦も含めて素晴らしいプレーをしたし、これからも日本を背負い、世界に通じる選手をめざしていくでしょう。
一方で日本ハンドボール協会も水面下で誠意を持って対応し、大阪高体連の第三者委員会による結論により、事態は改善、収拾に向かってテンポを速めていくはずです。
「大人たちの歪んだ感情」によって引き起こされたこの問題の勃発以降、T選手ばかりか両チームの選手たちも含めて心の中に大きな傷を負いました。
1日も早く、それぞれみんなの心に平穏が戻り、今後も大好きなハンドボールを力いっぱい、笑顔で楽しめる日が来ることを切に願っています。
どうかご理解のほどよろしくお願い申し上げます。